木を見たとき、なぜかゾワッとする。
森の中に入るのが怖い。
あるいは、ふいに現れた一本の大木が、なぜか胸騒ぎを起こす。
そんなとき、自分の感情に戸惑ってしまうかもしれません。でも大丈夫。怖いものは怖い。無理に押し殺す必要はありません。
ここでは、木が怖いと感じるときの対処法を、心理的な視点からわかりやすく解説していきます。
まずは「怖がっている自分」を否定しない
これは最初にして最大のポイントです。
「木が怖いなんておかしい」と思ってしまうと、その感情はさらに深く根を張ります。否定された恐怖は、やがて不安や自己嫌悪につながることもあります。
大事なのは、まず自分の心に「それでもいいよ」と声をかけること。
ちょうど、暗い部屋を怖がる子どもに「怖がらなくていい!」と叱るより、「怖いよね。でも大丈夫だよ」と寄り添ってあげるほうが安心するように、自分の感情にも優しく寄り添うことが、回復への第一歩です。
怖さの「正体」を少しずつ探ってみる
木のどこが怖いのか――幹の節?枝の影?静けさ?
まずはその「怖さの輪郭」をはっきりさせてみましょう。
たとえば、こう問いかけてみます。
木の何が一番気になる?
そのとき、体はどう反応している?
どこかで似た体験をしたことがある?
これはカウンセリングでも使われる「感情の言語化」というアプローチで、曖昧だった恐怖を具体的なイメージに落とし込み、脳の中の「恐怖のスイッチ」を少しずつ緩める効果があります。
もちろん、無理に答えを出す必要はありません。
少しずつ、「あ、こういうのが苦手なんだな」と気づければ、それで十分なんです。
怖さを「距離」で調整する
木を見た瞬間、心がざわつくなら、まずは距離を取るのも有効な方法です。
視覚的・心理的な「距離」を取ることで、感情の高ぶりを落ち着かせることができます。
たとえば、
公園の木が気になるなら、遠くから見るだけにする
森に入るのが苦手なら、写真や映像で徐々に慣らす
木陰に入るのが不安なら、木のない散歩コースを選ぶ
これは「段階的暴露療法」とも呼ばれ、恐怖の対象に少しずつ慣れていく方法です。一気に克服しようとせず、「今日はここまでできた」と少しずつ距離を縮めていくのがポイントです。
自分の感覚を信じて、安心できる環境をつくる
人によっては、「木を見ただけで心拍数が上がる」「胸がぎゅっと締めつけられる」など、身体的な反応が出ることもあります。
そのとき大切なのは、「無理をしない」こと。
周囲が「この森、気持ちいいよ〜」と言っても、自分の体が緊張していたら、その感覚を優先していいのです。
お気に入りの音楽、誰かと一緒にいること、柔らかい服、持ち歩くお守り――。そういった“安心アイテム”を持つことも、恐怖を和らげる手助けになります。
安心できる誰かに話す
「木が怖い」と人に話すのは、ちょっと勇気がいるかもしれません。でも、安心できる相手になら、一度口にしてみてください。
「言葉にする」ことは、心の中に閉じ込めた不安を外に出す行為です。それだけでも、心の負担はぐっと軽くなります。
「自分でもよくわからないけど、木が怖いんだ」と伝えるだけで大丈夫。理解されなかったとしても、「話していいんだ」と感じられれば、それは大きな前進です。
心理療法やカウンセリングも選択肢に
もし木への恐怖が日常生活に影響しているなら、専門家に相談するのも一つの手です。
心理療法では、「恐怖とどう向き合うか」「なぜそれが生まれたのか」を、対話を通じて丁寧に探っていきます。強いトラウマが背景にある場合は、認知行動療法(CBT)やEMDRなどの技法が使われることもあります。
これは決して「特別な人だけの話」ではありません。心のメンテナンスは、誰にとっても大切なこと。風邪をひいたら病院に行くように、心がしんどいときも、手を差し伸べてもらっていいのです。
無理に「好きになろう」としない
最後に、ちょっと意外かもしれませんが――
木を好きになる必要は、ありません。
よく「苦手を克服しなきゃ!」と思ってしまいがちですが、怖いものは怖い。それを受け入れて、自分に優しくすることのほうが、ずっと大切です。
無理に「慣れなきゃ」と思わず、「木とはちょっと距離を置いて付き合う」くらいの気持ちでいても、人生はちゃんと回っていきます。
おわりに
木が怖いという気持ちは、決して「変」ではありません。
そこには、あなたなりの理由があり、背景があります。
それを少しずつ知っていくことは、自分自身の心と向き合うことでもあります。そして、その過程はきっと、他の恐怖や不安とも付き合っていく力になるでしょう。
あなたの心が、少しでも軽くなりますように。
木の影ではなく、あなた自身の輪郭が、やさしく光に包まれていきますように。